97/10/26作成
98/01/07更新
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▼ダブリンからゴールウェイへ
▼初めてのツーリストインフォメーション
▼市中ひきまわしの刑?
▼くつした…
*このページには写真ありません。この頃はまだ写真を撮る心の余裕がなくて…
1997年8月5日 火曜日
11:00頃ダブリンに到着。やはり曇っていた。空港で出会った日本人男性の「レンタカーで北部へ行くので一緒にどうか」という親切なお申し出を辞退し、予定通り西部のゴールウェイへ向かうことにする。ダブリンからゴールウェイへは列車とバス両方の便があるが、後の移動のことも考えて安上がりなバス・エーラン(長距離バス)に決定。空港内のバス・鉄道インフォメーションのちょっと愛想悪いお兄ちゃんからランブラーチケット(3日間)を買い、まずエクスプレスバスでバスターミナルのあるダブリンの中心部へ向かう。道路標識はゲール語の下に英語が書かれており、アイルランドらしさを醸し出している。道路は日本と同じ左側通行。一ヶ月以上右側通行の国にいたのでなんとなく懐かしい。
バスターミナルは目的地別にゲートが設けられ、大きな発着時刻表も出ていて大変わかりやすい。ゴールウェイ行きのゲートには大勢並んでいたが、無事乗ることができた。
12:15、バスはゴールウェイへ向けて出発。長丁場なので途中トイレ休憩が一回。昼食を食べていないことに気付いたが、機内で朝食が2回でたから、後の方を昼食にしておこう。今にも降り出しそうな空模様で、車内はとても蒸し暑い。若者が多いが、なによりも彼らの服装に目がいってしまう。なにしろ夏だというのにほとんどの人が冬物のジャケットやセーターを着ているのだ。自分はと言えば、長袖の服は持って来たものの、上着は折り畳みのレインコートがあるだけ。寒いとは聞いていたけれど、そんな物を着なければならないほどなのか?いきなり不安になるが、疲れているし、ま、いいや!と寝てしまう。
■初めてのツーリスト・インフォメーション■ ▲TOP▲ ▼NEXT▼
乗物酔いもせず、16:00前にはアイルランド第三の都市ゴールウェイに着いた。看板に従ってまっすぐツーリスト・インフォメーションに向かう。ここのインフォメーションは一階がショップと両替・各種ツアーの受付などになっていて、奥にはカフェもある。目指す宿泊予約受付は二階なのだが、階段しかないので荷物を持って上がるのはひと苦労。でも、「荷物から目を離すな!」と書いた貼紙があるので、置いておくわけにもいかない。二階は昔の学校の事務室のような雰囲気である。ここで銀行のように受付札をとって順番を待つ。他のツーリスト・インフォメーションもほとんど同じような方式だ。
しばらく待ってようやく順番がまわってきた。係の女性に3泊したい旨伝えたが、シングルでしかもバス又はシャワー付き(アン・スイートEn Suiteという)はもともと数が少ない上、ハイシーズンであることから、近くに見つけるのは難しいと最初に言われてしまった。また、タバコを吸うかどうかをチェックされた。B&Bはいわゆる民宿なので、安全面や部屋が汚れるなどの理由からスモーカーは嫌がられるようだ。その上で、あちこちに電話をしてくれた結果、市内から2マイル離れているが、希望のシングル・シャワー付きの部屋が見つかった。最後に「これから宿にすぐ行きますか?バス?タクシー?」と聞かれたが、これも定番の質問だ。ともかく早く宿に着きたいが、今日はランブラーチケットが使えるので、けちってバスで行くことにした。バス停の場所、バスの番号などを詳しく教えてくれる。なんとなく、一人でもやっていけそうな気持ちになって、インフォメーションセンターを出た。
道行く人も冬物のフリースやコートなぞを着込んでいる。とりあえずレインコートを着たが、たしかに涼しい。いきなりアランセーターを買わなければならないかもしれない。
教えてもらったバス停で待つこと15分、バスがやって来たが、行き先表示板が壊れている。運転手に「これ、Old Fieldへ行きますか?」と聞いたら「これは違う。もうひとつ前の停留所から乗りなさい」と言われてしまった。すごすごとバスを降り、さらに待つこと15分、やっと目的のバスがやって来た。またまた運転手に「Old Fieldに着いたら教えてくれる?」と聞くと、なんと「そんな所は知らん」とのたまった。そして乗客に向かって「誰かOld Fieldを知ってるか?」と聞くのだ。なぜ自分の路線のバス停の名前を知らないのか、わたしにはとんと理解できなかったが、わたしが握り締めている予約票を見て、乗客の一人が「バスの番号があってるから大丈夫だ」と言ってくれたので、このバスに乗っていくことにした。
しかし、アイルランドでは(これはイギリスでも、また他の国でも同様らしいのだが)バス停にいちいち名前がない。ましてや日本のバス停のように「次は○○前」なんて親切なことはどこにも書いていない。まぁそのことは事前にガイドブックなどで知識として知ってはいたのだが、「バスの運転手に停留所近くになったら知らせてくれるように頼みましょう」などと書いてあったので、すっかり安心していた。最初から当てが外れ、何とかやっていけそうな気持ちはどこかに吹き飛んだ。
誰もわたしの降りる停留所を知らない。どうしよう…わたしの気持ちをよそにバスはどんどん走っていく。「たしか、市内から2マイル離れていると言ってたな…1マイルって1.6キロだっけ…そしたら3キロちょっとか…」など頭の中で必死に計算し(パニックになるとこんな計算も出来なくなるものです)そろそろかな?どうかな?と外を窺う。とうとう我慢できなくなり、ちょっとしたスーパーと肉屋のあるところで降りてしまった。
降りてはみたものの、途方にくれた。時刻はもうとっくに17:00を過ぎている。勇気を出して、片づけを始めていた肉屋に聞いてみたが、彼はわたしの予約票をじっくり見た後で、「そこを左に曲がったところにバス停があるから、そこからバスに乗れ」と言うばかり。
三度(みたび)バス停で待つこと15分、やって来たバスの運転手に「Old Fieldに着いたら教えて」と頼むと、うんうんと頷いてくれた。助かった!ほっとして座席に転がり込む。バスはさびしげな一角を通り抜け、遠くに海が見えるちょっとにぎやかな場所へ差しかかった。このあたりかな?と運転手の顔をうかがったが合図はない。まだなのだな、と思いながらまた窓の外を見る。バスはどんどん走り続け、なんとなく、見たことがあるような所へやって来た。あれ?これ、さっきの肉屋やん。遠くにはゴールウェイ大聖堂の丸い屋根も見える。どういうこと?
信じられないことだが、このバスは循環コースを走り続けて、中心部に戻ってきてしまったのだ。バスの運転手はわたしが頼んだことなんかすっかり忘れていた。ひどい。ひどすぎる。振り出しだ。
時刻は18:00をまわってしまった。予約票には、18:00までに着かなければ予約を取り消すと書かれてある。この際英語がヘタもへったくれもない。テレホンカードを買って電話ボックスに飛び込んだ。「もしもし、ツーリストインフォメーションを通じて予約した○○です。道に迷ってしまって、まだゴールウェイの中心部にいます。これからタクシーをつかまえて行きますので、部屋をとっておいてください」と一気にまくし立てた。電話の向こうのミセスは、やさしく、「わかりました。待ってますよ」と言ってくれた。不覚にも目頭がじわっとなってしまった。
今度はタクシー乗り場へ直行。運転手は荷物をトランクに入れてくれた。後ろに乗るかどうするか一瞬迷ったが、助手席に乗り込んだ。(注:ヨーロッパではタクシーは自動ドアではない。それに、客が一人の場合は助手席に乗ることが多いようだ。)運転手に「Old Fieldって知ってる?」と予約票を見せながら尋ねると、「OK!」と車を走らせてくれた。あぁ、最初からこうしておけばよかった。ドライバー氏はわたしが日本人だと知って、いろいろ日本のいいところをほめてくれる。ついつい、「さっきバスに乗ったらねぇ、これこれで…」と愚痴をこぼしてしまった。考えてみれば、今朝早く飛行機に乗り込んでから、会話らしい会話をしたのはこれが初めてだ。自分は無口なほうだと思っていたが、半日以上しゃべらないと、人間が変わっておしゃべりになるらしい。
とにかくやたらと時間がかかったが、なんとか宿に辿り着き、ミセスのやさしい出迎えをうけた。部屋は広くはないが清潔だ。宿の周囲は似たような家が建ち並ぶ新興住宅街のようなところで、食事が出来るような所はない。かといってこれからまた市内に戻る気力はない。旅の初日の夕食は、機内食の残りのパンとバター、そして水。いきなり貧しいのだ。
8月6日 水曜日
6:30起床。今日もくもり。朝食はフランス人のカップルとわたしだけ。昨日は気付かなかったが、ここからも遠くに海が見える。近所の造成地の工事の音があたりに響き、なにやら寂しげなところだ。
朝食後、バスに乗って市内へ。バスはゴールウェイ市内は均一料金で先払い。宿には石鹸はあったがシャンプーがなかったので、どこの街にも必ずあるBODY SHOPでリンスインシャンプーを買い、次にとにかく寒いのでさんざん下見をしてからアランセーターを買う。アランセーターは、本来はゴールウェイのさらに西、アラン諸島で作られる編み込みのセーターだ。脱脂していない糸で編まれているのでけっこう特有のにおいがするが、その分暖かい。日本に帰ったとき暑すぎるかも知れないので、カーディガン仕立てになったものを選んだ。日本ではLじゃないとダメなときもあるわたしだが、ここでは一番小さいサイズ。なんだかスマートになった気分だ。
ようやく安心したところでゴールウェイの街をぶらぶら。観光地らしく土産物店や食べ物屋が狭い道路の両側にひしめき合っている。どの店も思い思いの外装で大変カラフルだが、なんとなく、ディズニーランドのショッピングアーケードのような印象。街角には縦笛を吹く少年や、妙なラッパであやしげな重低音を出すレゲエっぽい兄ちゃんなど、さまざまなストリートミュージシャンがいる。しかし、何度も行き来するうちに、少々飽きてきた。途中から雨も降ってきた。
クラダリングの浮き彫りのある古い聖ニコラス教会、新しくてりっぱなゴールウェイ大聖堂、とりあえずめぼしいものは全部見たので、古いスペイン門を見に行くことにした。コリブ川沿いの遊歩道をずっと歩いて着いたものの、あたりは人がおらず、ちょっと怖くなり、すぐに引き返した。
インフォメーションセンターに行き、明日のアラン諸島行きのフェリーを予約する。3つあるフェリー会社のうち、なぜか真ん中の窓口の会社が人気だが、そこはフェリー乗り場までバスで移動しなければならないので、一番左側の窓口の会社を選んだ。そこの便だとアラン島での滞在時間がやや短いのが難点だが、フェリー乗り場はインフォメーションセンターからすぐで、朝余裕を持って出てこられる。そうこうしているうちに夕方になってきた。
気がついたら朝食の後何も食べていない。どこかで食事をしようかと思ったけど、ずっと歩きまわっていたせいかあまり空腹感がない。それより疲れてしまったのでサンドイッチと飲み物を買い、20:00ごろ宿に戻る。ミセスが「あしたはどうするの?」と聞くので「アラン諸島に行く」と答えたら、「じゃあピックアップの電話をしてあげよう」と言ってくれた。え?ピックアップ?「わたしはインフォメーションセンターの近くのフェリーポートから乗るんだけど」と答えると、けげんな顔をされた。フェリー会社のパンフレットを見せると、「あぁ。この会社のフェリーはよくない。一番時間がかかるのに。仕方ないね。それでは明日は自分で市内まで行ってね」と言われてしまった。うーん、失敗だ。真ん中のフェリーを頼んでおけば、市内に出なくても、宿の近くから楽々フェリー乗り場まで行けたのだ。
ちょっとみじめな気持ちになりながら部屋に戻り、靴を脱いだらたった一日でくつしたに穴があいていた。ジーンズの裾も泥がついている。さらにみじめになりながら、下着とジーンズの裾、穴のあいたくつしたを洗面所で洗った。小さいサイズのソックスはなかなか見つからないかもしれない。捨てるわけにはいかないのだ。ソーイングセットを持ってきて良かった。
24:00すぎ、就寝。
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